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February 12, 2005

『スーパーサイズ・ミー』

顔の見えない解説者が論じるNHK特集的なドキュメンタリーに対して、昨今のドキュメンタリー映画は作り手自身が対象とぶつかり身を以て対象を把握する(と共に大上段になりがちな語り口を緩和する)スタイルが流行りの様です。昨年話題に上ったM.ムーア監督の『華氏911』に続いて、モーガン・スパーロック監督の本作では、監督自身が「ファーストフード漬けの30日間」に挑戦します。

槍玉に挙がったのは"世界に冠たる"ハンバーガー帝国マクドナルド。かつて肥満の責任を問われ訴訟まで起こされたこの巨大ファーストフードチェーンの食事だけを取り続けることで、監督はその影響を身を以て実証しようとします。

この滑稽かつ危険な実験の主眼は、「果たしてファーストフードは本当に人体に害があるのか?」。人口に膾炙しつつも誰も真剣に取り合わないこの話題を、実際に目に見えるものとして観客に突きつける事でした。

時にユーモラスに、時に悪趣味な描写や告白を織り交ぜつつ、即席の医師団とモーガンの実験は順調に結果を出して行きます。同時に映画は切迫感と危機感を高め、実験も半ばを過ぎてその行き着く先が「死」であると判明する時点では、カメラの前にいるモーガンにも見ている観客自身にも、笑う余裕は最早ありません。

この映画の結論は、「ファーストフードは喫煙や過度の飲酒に引けを取らない危険性が存在する」というものでした。これは食事の半分以上を外食に頼っている私にはかなり身につまされる話。劇中モーガンが訴える身体の不調の数々に覚えのある身としては、観賞後ファーストフードの看板を見ても足早に通り過ぎさせるだけの効果は確かにありました。国民の4分の1が肥満し日本以上にファーストフードチェーンの利用頻度が高いアメリカ本国では、その影響も更に強いものでしょう。

そしてそれこそが、ファーストフードの危険性を説く以上に監督が劇中時間を割いて訴えかけた事、「その危険性に対する無関心に警鐘を鳴らす」試みの、成功の証であるように思えます。かつて末期ガンのユル・ブリンナーが喫煙の害を説くCMに出演し物議を醸した事がありましたが、スパーロック監督は我が身を題材に、ファーストフードの分野で同じことをやってのけた訳です。

そうした意味では、この映画は単なる無茶な挑戦を描いたイロモノではなく、「一般が関心を持たない問題を取り上げそれについて観客に熟考と検討を促す」という、ドキュメンタリーの王道に則った作品であると言えるでしょう。監督自身を被験者とする試みも、観客に作品を信頼して欲しいという誠意の所作と言えるかもしれません。センセーショナルな題材と前宣伝とは裏腹に、本作はとても誠実に行われた主張である様に思いました。

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Comments

まずは、御復活おめでとう御座います。
先日観たばかりなんで、この作品にレスした訳ですが、
ファースト・フードを初め、外食産業に巣食う病巣を
浮かび上がらせた秀作でしたねぇ……。

まず、某ファースト・フードチェーンに限らず、外食チェーン
店の問題点。それは……

1.動物性油脂が多く使われている。病名【非アルコール性
肝炎】を引き起こす原因の一つですし……
2.単糖類が多く使用されている。病名【糖尿病】の原因。
3.これまた塩分が多い!高血圧気味なんで気を付けないと……

糖分とカフェインは控えている生活ですが、塩分も最近抑えた
食事に切り替えています。

そうそう……病気と映画を取上げた凄い御屋敷がありましたので
御紹介。

http://harufe.exblog.jp/
(メディカルでビューティな映画)

この御屋敷で取上げるかなぁ……美女が不在なんで無理かなぁ?

Posted by: 大倉 里司 | July 25, 2005 11:45 PM

ご無沙汰しております。そちらのサイトの方も少しずつ復調に向かわれている様でなによりです。ご自身も余り無理されません様に。

自分が健康な時には「健康」というものはそれこそ水や空気の様に気にならないものですが、それが崩れると俄に重大事となって降り掛ってきます。その「普段気にしない」事を逆手に取ったファーストフード業界、ひいては(大倉さんの映画評でも指摘していましたが)幼少時からの米食品業界による意識操作が、この映画のウリでもある「ビッグマック耐久30日レース」以上に怖さを呼びますね。

本作は確かに外食産業全般に懐疑の目を向けるのに十分で、マクドナルドが本作のヒットを危惧したというのも頷けます。出来れば、スパーロック監督には続編として、健康食品やサプリメントの実体も検証してくれると嬉しいのですが・・・。

お奨めいただいたサイトは楽しいですね。『レナードの朝』の元になった事例が実は人体実験まがいの強引なものだった、等、視点の差が見せてくれる映画の意外な姿を楽しめそうです。(取りすぎると毒にもなりそうな所もまた同様)。教えていただき、有り難うございました。

Posted by: olddog | July 26, 2005 07:00 AM

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