« 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 | Main | 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 〜 F.ラング監督作品 〜 »

September 11, 2005

映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 〜 F.W.ムルナウ監督作品 〜

今回の特集上映、最初の週末はF.W.ムルナウ監督作品の集中上映。一監督の一時代の軌跡を連続して追う事が出来、週末しか時間の取れない身としてはありがたい番組編成です。

『シャドウズ・オブ・ヴァンパイア』でも強調されていた、現場で白衣を纏いまるで化学実験でもするかの様に撮影に臨んだムルナウの姿は、その実験結果たる一連の作品群を見ると成る程と頷けます。彼の作品中に登場する人物達は、一様になにかの触媒(神や悪魔の様な大それたものから、一本の映画や街角ですれ違った女性や奇妙な依頼主の様なありふれたものまで)に触れる事で、それまでの自分を見失い、止めどなく意識と立場を変化させ続けて行く事になります。そうした変化を、冷徹に追いつつもある種の理解と共感を以て描写するのが、ムルナウ特有の作劇法、と言って良いのでしょう。

心理の変転を描くと言う事は、則ち人の持つ様々な暗部を描き出すという事でもあります。その点でムルナウの視線は容赦がありません。どれほど魅力的な人物でも転落の様から目を逸らす事はせず、逆に安易な同情を煽る真似もせず、ひたすら事実だけを描写し続ける事で、映画の枠を超えるぎりぎりの線まで登場人物を追いつめて行きます。そして同時に、当時存在した技術を最大限に駆使して、描写から物語に一定の方向性を持たせる事も忘れません。"見せるものの取捨選択"と"見せ方の選択"という演出における最も基本的な2項について、ムルナウは他を圧倒する正確さ(それは嗅覚に近いものだったのかもしれません)を持っていたものの様です。

今回の特集上映は、スケジュールによってはピアノとヴァイオリンの生演奏付きで楽しむ事が出来ます。フィルムの修復とともに新たに起こされたものが多いと言うこの"サウンドトラック"を、作曲したアリョーシャ・ツィマーマン氏自身が演奏してくれるという贅沢な鑑賞。古い映画の常として今回も一度フィルムトラブルがありましたが、画面が真っ暗になってもそれまでの劇伴を素早くモチーフを多用した間奏曲にすり替え、見事に間を持たせてくれました。CD化されているのなら是非手に入れたいものです。

各作品の簡単な感想については、以下をご覧下さい。

「ドイツ時代のラングとムルナウ」 F.W.ムルナウ監督作品

|

« 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 | Main | 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 〜 F.ラング監督作品 〜 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 〜 F.W.ムルナウ監督作品 〜:

« 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 | Main | 映画を巡る事柄:特集上映「ドイツ時代のラングとムルナウ」 〜 F.ラング監督作品 〜 »