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October 08, 2005

『銀河ヒッチハイク・ガイド』

20年近く前にラジオドラマとして発表されるや途端に大ヒットを記録し、間を置かず書籍化、テレビ化されいずれも好評を博したD.アダムズの傑作、満を持してスクリーンに登場です。

実は上に上げた数々の大ヒットの殆どが"ほぼイギリス限定"だった事が物語る様に、本作のクセの強さは相当なもの。筋立ては「普通の男がスペースオペラの世界に放り込まれる」結構ありがちなものですが、その"ありがち"を逆手に取り、ステレオタイプを予想する読者を片端から裏切ってみせる痛快さがアダムズによる小説版の魅力でした。

映画版でもその魅力は健在です。映像と言う武器を得て具体性を増したギャグの数々は、原作以上の破壊力と、破壊力のカウンターとしてこれも原作以上の脱力感を届けてくれます。小説版冒頭のちょっと物悲しい「イルカの最後の挨拶」が一大水中レビューとなってタイトルを飾った瞬間、映画化に対して私が抱いていたありがちな懸念は全て吹き飛ばされてしまいました。

例えば"実現確率の低さそのものをエネルギーに転嫁して稼働する"「無限不可能性ドライヴ」(劇中では少々説明不足だったのが残念)により、主人公達を追尾していた巡航ミサイルが、およそありえない存在に変身させられる場面。小説版では読者の想像力に多くを頼っていた一連の描写が、デジタル技術とミニチュアワークにより圧倒的なディテールを伴って再現されます。余り想像力の逞しいとはいえない読者だった私にとっては、眼前に展開されるその光景は、原作を超えて強烈なインパクトを与えてくれるものでした。

映像の力により原作の良質な部分をグレードアップして届けてくれるという、最も望ましい映像化の例が、本作では至る所に見て取れます。それは単に映像が持つ特性というばかりではなく、アダムズの作風とその結晶に対して、脚本・演出の双方が深い理解を示したからなのでしょう。

いたずらに派手さ大袈裟さを追求する訳ではなく、乾いた諧謔を陰鬱なシニシズムに変質させる事もなく、地球滅亡から大宇宙の真理までシリアスなお題目全てを笑い飛ばして行けるだけの、本質的な健全さを映画版が失わずにいてくれたのは、原作のファンとしても非常に嬉しい所。

そうした姿勢が最も顕著に現れているのは、タイトルにもなっている「銀河ヒッチハイクガイド」の描き方と、その劇中での扱われ方でしょう。余計な説明をすべて引き受け進行役として機能するガイド説明文のナレーションは、ここでは魅力的なグラフィックアニメーションを伴って更に有効に機能します。物語が典型的スペースオペラに流されそうになる度に登場し、観客を正気に戻してくれるガイドと、大真面目なライブアクションとの綱引きが実に楽しい。

言語を補強する映像の力が頂点に達するのは映画の終盤。破壊された地球の「バックアップ」を主人公アーサーが訪れる場面でしょう。大スクリーンを隅々まで使って示される圧倒的な景観と、それを結構アナクロな手法で"建築"している作業員の取り合わせは、それまでの「ご大層な法螺話」から、大法螺のレベルを更に一段引き上げるものでした。

そこにはマザーアースに対する敬意と、それさえも位相をずらして見せてしまう想像力の飛躍を、無理無く観客に許容させるだけの説得力がありました。この時点で『銀河ヒッチハイクガイド』は良質なSFとしての正体を現し、それは映画の為に少々強引に作り出した大団円を超えて、不思議な感動を引き起こしてくれたのでした。

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Comments

こんばんは。
楽しみにしていましたよ、杉山さんの感想。(笑)
ところで、杉山さんは原作のファンだったのですね。私は原作を全く知らないで観たのですが、この作品を観た日は体調も劇場コンディションも共に最悪の日だったので、正直言って、よく解からない消化不良のまま劇場を後にしました。

しかし、杉山さんも仰っているように特にラストの映像など忘れられない素晴らしいシーンがいくつかあったり、妙に心に残るキャラがいたりで気になってもう一度体調のいい日に観たくて仕方ない作品なんですよ。
だから、好みの違った信頼できる方々の感想が色々聞きたくて、オフの時に是非観て欲しいなんて言ったんですけどね。f^_^;;

なんか間接的にリクエストしたような形になってしまいましたけど、感想をうかがえて嬉しいです。ありがとうございました。
私も近いうちに再チャレンジしたいと思います。

Posted by: シューテツ | October 10, 2005 10:46 PM

シューテツさん、こんにちは。杉山です。
この映画、通常のサスペンスや盛り上がる展開に至る度に、いちいち話の腰を折ろうとするので、気分が乗らない時に観てしまうと悲惨な事になりかねませんね。

原作小説の方では、主人公達が危機に陥る度に「彼等は助かるから心配しなくていい」等とおせっかいにも予告までしてくれます(笑)

本国では年内のDVD発売も決定している模様。それほど長い映画でも無くさほど売れている様子も無い(残念)となれば、地上波での放送もそう待たずとも済みそうです。

もし再見の際に印象が変わっていましたら、是非教えていただきたく思います。私の方は逆に、原作に思い入れの無い方がこの映画をどう思うのかが知りたいもので・・・。

Posted by: olddog | October 11, 2005 07:40 AM

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Tracked on October 17, 2005 01:33 AM

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