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February 26, 2006

『オリバー・ツイスト』

ディケンズの小説群といえば善男善女が運命に翻弄される大衆小説の王道。100年以上前の厳格かつ単純な道徳律に支配された彼の代表作を、よりにもよってロマン・ポランスキー監督に任せてしまう、という無謀が何を生み出すかに興味がありましたが、出来上がったのは無難この上ないダイジェスト版。製作者が冒険を嫌ったのかポランスキー監督が野心を失ったのか、いずれにしても残念な仕上がりとなってしまいました。

残念と言えば、ディケンズの扱う物語がいまや「賞味期限切れ」となってしまっている事も又残念な事実。勧善懲悪を成立させる為に大衆文化が150年に渡って積み上げて来た様々な工夫や技法を持たない彼の作品は、現代の読者から見れば良く言って純朴、意地悪な味方をすれば粗雑で強引すぎる筋運びとも見えてしまいます。

ディケンズ自身は、執拗と言っても良い程のディテールの描き込みと、端役にまで行き届いた魅力的な人物造形の積み重ねで時代の壁を越え、未だに魅力的な世界を形作ってはいますが、それを他人が代替わりして映画化するとなると、相当の工夫を凝らすかディケンズ御大に見合うだけの描写力が必要です。それは並大抵の事ではありません。

単に精妙な舞台をしつらえ個性的な"顔"を揃えただけでは原作の筆致には到底追いつかない。そこの所を2006年版『オリバー・トゥイスト』は見誤りました。本作が追求すべきだったのは、類型的なキャラクターがその「類型」を個性に昇華させるまでの、更なるキャラクター描写の掘り下げと、掘り下げられ個性を獲得したキャラクターを物語の推進役に据える事で強引さを"実現可能な選択肢"へとすり替えてしまう話術の選択だったのではないでしょうか。

R.ポランスキー監督の起用は、一見奇妙な物語にも過剰なリアリティを込めてしまう、彼の独特な話術が求められたが故のものかもしれません。しかし彼のフィルモグラフィから(また彼自身から)考えても、ディケンズの揺るぎない道徳観に支えられた世界は、所謂「ポランスキー映画」の中に位置を見出す事が出来ません。

必然的に監督の視線は、単に善良で純真なだけのオリバー少年よりも、彼を陥れようとする悪人達の方に、より注がれる事になります。極端な経済格差の元で最低の生活を送る者達と、その中から必然的に登場する犯罪者達、そして彼等が大英帝国の暗部に造り出したもうひとつの「社会」について描写する時、ポランスキー監督の筆はそれこそディケンズを超えて活き活きと踊り出します。

もとより監督には、「名作を映画化する」という意識は強くはなかったのでしょう。彼がディケンズの小説に見出したのはストーリーではなく、個性的な登場人物が造り出す物語世界そのものであり、だからこそ彼は、その世界を再現する事に心血を注いだものと思われます。・・・・そしてそれは当然、かつてディケンズのプリミティブな物語群に魅せられた少年少女だった観客達にとっては、最大の裏切り行為でもあったのでした。

当時のロンドンを魅力的に再現したオープンセットの魅力と美術への拘り、そしてそれを十全に活用した幾つかの(数少ない)場面を見るにつけ、「これが原作を持たないオリジナルな物語であったなら」と思わずにはいられません。そうした物語の上でなら監督も自由に監督自身の指向(それはより不道徳で不健全なものであったでしょうが)を追求し、それがストーリーとの間に摩擦を生み映画が停滞してしまう事もなかったでしょう。観客もまた「ディケンズの物語」ではなく「ポランスキーの世界」を素直に期待して幕が開くのを待っていられた筈。その物語が賞味期限切れとなった今だからこそ、"チャールズ・ディケンズ"の名は、正面から挑むには尚更重過ぎる看板だった様です。

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雰囲気はすごく良かったと思うそれと、主役のオリバー君はすっっごくかわいかった でも、なんというか何が言いたいのか良くわからなかったというのが観終わった感想・・・いや、主人公オリバー君について語りたかったんだろうけど、本当にそれだけで、ずっと彼を基準にして彼のことを追い続けただけ・・?・・・という感じだったそれなのに、その肝心のオリバー君はイマイチ主体性�... [Read More]

Tracked on February 26, 2006 03:24 PM

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