『秘密と嘘』
今年はフランス映画社「Best Film of the World」の30周年なのだそうで、これまで同社が配給して来た傑作の中から、特に際立った作品を何本か選んで特集上映してくれました。お陰で懐かしい映画達に久しぶりに再会できただけでなく、公開当時観逃した本作のような傑作と、ようやくスクリーン上で対面する事ができました。
登場人物全員が集まるパーティの場面。クライマックスにおいて全ての秘密と全ての嘘があからさまにされた後に、映画はこっそり最後の秘密を紛れ込ませます。映画の中のふたつの家族は、彼等を翻弄した不幸と困惑の元凶が、彼等の中のただ一人によるものである事を、最後まで明言せずにしまい込んでしまいます。
シンシア・ローズの奔放な生活が存在しなければ、二人の娘のおかれた境遇は全く変わっていた筈であり、彼女の依存癖が無ければこれほど母娘間、姉弟間の関係が奇妙になる事もなく、弟の妻に対する彼女の嫉妬と偏見が無ければ、弟夫婦がまた別の秘密を抱え込む必要もなかった筈。全てはシンシアの自堕落が引き起こしたものです。
只それだけなら、シンシアを糾弾しても何ら益はありません。起きてしまった事は起きてしまった事として、「秘密と嘘が暴露された今」を生きて行く事の方が、ふたつの家族と一人の女性にとっては重要です。
しかしその時点に至っても、シンシア自身は「何がそれらを引き起こしたのか」を認める事ができないまま。彼女は自身を被害者と思い、"誰も助けてくれなかったから"悲劇が起きたのだと訴え、その場の皆にそう思ってくれる事を要求します。
ふたつの家族と一人の女性がその訴えを受け入れ、平穏の代償に共有したものが、彼等にとって今の所唯一の、そして最も新しい秘密であり、彼等はその秘密を埋もれさせたままにする為に、他愛の無い嘘を積み上げて行く事になるのでしょう。
当然ながら、マイク・リー監督はそうした構図を意図して採用しています。秘密や嘘を生み出す元となった「一人」を設定し、その「一人」の為に翻弄される人々を描き、表面的には非難が一箇所に集中する図式を提示してみせる。タイプキャストを嫌ったこの映画の配役の中で、ただ一人シンシアにだけ、「英国の醜悪な中年女」を幾度も演じて来たブレンダ・ブレシンを配役している事からも、監督が感情のレベルで観客を誘導しようとしている事は明白でしょう。
その上で、映画はそうした図式を崩し得るひとつの嘘を設定します。自堕落な女に手放され幸福な両親に恵まれた女性ホーテンス・カンバーバッチは、その境遇と、境遇により得た知性により、終止映画の手綱を引き締め続けます。ふたつの家族のしがらみから自由な彼女を、観客を主題に向かわせる導き手に監督が選んだと考えるのは自然でしょう。
そうした役柄を降られたホーテンスは、映画の題名とは裏腹に、秘密や嘘を「暴く」行為には走りません。彼女は終止、ただ知るべき秘密を知り、嘘の効果を確かめる為に自ら動きだし、そしてそこで知り得たことは全て自らの裡に抱え込んで生きようとする女性としてあり続けます。自身も大きな秘密の一部としてシンシアの家族と接し、シンシアの保身から出た嘘に同調する事で、彼女は彼女の知り得た「秘密と嘘」をそのまま受け入れようとする意思を示したのでした。
彼女の存在により、この映画は単純な「秘密と嘘から解放される人々の話」を離れ、「秘密と嘘に向き合う人々の話」に昇華します。人と人との関わりの中では何ひとつ秘す事無く、何も偽らずに過ごす事が不可能である以上、人はそれらを前提に、しかしそれらに寄りかかる事なく生きて行く術を身につけねばなりません。
嘘に耽溺したシンシア・ローズと、秘密を武器としたホーテンス・エリザベス・カンバーバッチを対極に置いて、リー監督は「秘密と嘘」に翻弄される人々がそれらの存在を自覚し、それらを生み出した自身をじっくりと吟味する過程を描き出してくれました。そこで繰り広げられる濃密な交流の中から、最後に生まれ出たのが予想外の「優しさ」であり、しかもそこには(シンシア・ローズただ一人を除いて)一片の欺瞞も紛れ込んでいない事は、嘘に導かれ秘密を残して終るこの映画に付き添って来た観客にとっては、とても救われた気分にさせられるものでした。
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Comments
Today, I went to the beach front with my children. I found a sea shell and gave it to my 4 year old daughter and said "You can hear the ocean if you put this to your ear." She put the shell to her ear and screamed. There was a hermit crab inside and it pinched her ear. She never wants to go back! LoL I know this is completely off topic but I had to tell someone!
Posted by: youtube.com | July 29, 2014 04:08 PM