2011年度「日本インターネット映画大賞」への投票
例によって全く感想を書かないままの、2011年の個人的ベスト映画選出です。個人的にも世間的にも流れの早い一年でしたが、それでも個々の映画と向き合う時間を疎かにせずに済んだのは、これらの傑作達が常に私を映画に引き戻し続けてくれたからに他なりません。
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『 外国映画用投票フォーマット 』
「マネーボール」 3点
「ソーシャルネットワーク」 3点
「サラの鍵」 3点
「猿の惑星:創世記」 3点
「メアリー&マックス」 3点
「息もできない」 3点
「ヒア アフター」 3点
「イリュージョニスト」 3点
「ミスター・ノーバディ」 3点
「ミッション:8ミニッツ」 3点
【コメント】
不謹慎を承知で書いてしまえば、3月11日の東日本大震災は、その年の映画を見渡すにあたってひとつの評価基準として機能してしまいました。
あの時我々が目にした脅威と恐怖と畏怖の力、そしてその後に様々な状況下で立ち現れて来た人々の「ドラマ」に、作られた物語がどれだけ渡り合い、どれだけの可能性を示す事が可能なのか。そうした視点を個人的にはどうしても排除できません。
2011年はここ数年と同様に粒揃いの作品が出揃った年でしたが、少々偏った視点から選んでしまった為に、多くの「ウェルメイドな」傑作(『英国王のスピーチ』や多くのハリウッド製アクション大作)が選に漏れてしまった点は否定できない所です。
実在の事物・事件に在を取るだけでなく、そこから「現在の私達」へのフィードバックを果たそうとした苦闘が見られるのが上段3本。既存の社会への懐疑とその中に埋没する「個」が如何に「個」のままで社会と切り結ぶかを追求した3本です。特に『サラの鍵』は、これまでホロコーストを題材にしたどの作品も成し得なかった、「現在の私達に何ができるか」に対するひとつのごくささやかな回答を示し得た、という点で得難い一本です。
常に身の回りにあるけれど誰も本気で目を向けようとしない、可能ならば目を背けてやり過ごそうとする事物に対して、正面から対峙して活写してのけたのが、『猿の惑星:創世記』『メアリー&マックス』『息もできない』『ヒア アフター』『イリュージョニスト』の5本。それぞれの映画でそれぞれの登場人物が陥る絶望を描き切る事で、絶望を乗り越える意思をも観客に届ける事に、これらの映画は成功していました。娯楽大作として作られた『猿の惑星』前日譚が、そうした側面でもシリーズ一作目に原点回帰してくれた事は予想外の驚きです。
そして最も困難な課題、現実に圧倒されて埋もれてしまいかねない「物語」の復権を、『ミスター・ノーバディ』と『ミッション:8ミニッツ』の2作品が高らかに謳い上げます。一方は可能性により生み出された想像上の存在が生命と永続生を獲得する事によって、もう一方は無限の可能性を推し進める事で実際に世界を想像し得ると具体的に指し示す事で、この2作はスクリーンのこちら側にいる我々が、我々個人の「物語」を紡ぐ事の重要性と可能性を改めて強調します。
常に映画は(それが意識的か否かに関わらず、)時代に寄り添い時代の要求に応えようとするものの様です。日本で震災とその後現在に至るまで続く大混乱を経験した我々に、そうした経験を位置付け個々に昇華する為の手助けが、震災とは無関係の太平洋の対岸から届けられるというのも思えば不思議なもの。映画や映画を含む膨大な物語群の持つ力と必要性を、改めて考え直させられる選出となりました。
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【監督賞】 作品名
[ダンカン・ジョーンズ] (「ミッション:8ミニッツ」)
【コメント】
『月に囚われた男』がビギナーズラックではなかった事を見事に証明して見せた手腕に対して。
スペクタクルと話術のトリックに溺れる事なく、終始主人公の内面に寄り添い続ける誠実さを今後も失わずにいて欲しいものです。
【主演男優賞】
[アンディ・サーキス] (「猿の惑星:創世記」)
【コメント】
多分諸々の賞レースからは完全に無視されるでしょうが、2011年に最も困難なかつ深い心理描写を見せてくれたのは『猿の惑星』のシーザーでした。
デジタルアクターが物珍しいものでなくなった現在こそ、サーキスが諸々のデジタルキャラクターに埋め込んで見せた個性は評価されるべきと思います。
次点は2時間に及ぶ一人芝居を全く辟易させずに演じ切った『127時間』のJ.フランコに。
【主演女優賞】
[レイチェル・ワイズ] (「アレクサンドリア」)
【コメント】
余りにも時代に先行しすぎた天文学者ヒュパティア像の創出は見事でした。時代の持つ矛盾と幼さと狂気を、ヒュパティアという女性が内在する衝動と焦燥に置き換えて、映画のテーマを殆ど彼女自身の実像で表し切ってしまう存在感。私にとって「レイチェル・ワイズ出演作」は傑作か意欲作のお墨付きという印になりつつあります。
【助演男優賞】
[ジャスティン・ティンバーレイク] (「ソーシャルネットワーク」)
【コメント】
マーケティングの暗黒面に世間知らずのギークを誘い込む現代のメフィストフェレスを見事に演じ切ってくれました。正直シンガーとしての彼には殆ど興味を持っていませんでしたが、魅力的なバイプレイヤーとしては今後も楽しませてくれそうです。
【助演女優賞】
[ジェシカ・チャスティン] (「ツリー・オブ・ライフ」)
【コメント】
『ツリー・オブ・ライフ』の退屈な部分、人物パートをほぼ一人で引っ張ってくれた功績に対して。あの一家がただの虐待家庭にならずに済んだのは、常に彼女が仕草と佇まいによって、スクリーン上に愛情を提示し続けてくれたからに他なりません。
T.マリック監督の次回作にも続投が決定しているとの事で、公開がいつになるかはわかりませんがこちらも楽しみです。
次点は、同じく毒にも薬にもならない映画『SUPER8』を一人で牽引したエル・ファニングに。
【ニューフェイスブレイク賞】
[ダコタ・ゴヨ] (「リアル・スティール」「マイティ・ソー」「ディフェンドー」)
【コメント】
いきなり三本のメジャー作品で登場した天才子役・・・ではありますが正直『リアル・スティール』のインパクトが強すぎて残りの2作での彼は余り印象に残っていません。
それだけ『リアル・スティール』の彼は見事でした。
【音楽賞】
"The Show" (「マネーボール」挿入歌)
【コメント】
今年の映画はどれも見事なサウンドトラックが彩ってくれましたが、最も印象に残ったのは本作の劇中で子役がほんのワンコーラスだけ歌うこの一曲。
劇中2回流れるこの曲が、一回目は主人公の心情と疑念を、2回目はそれを踏まえた上で尚信念を貫く事の辛さと素晴らしさを的確に象徴し、抜き難い一要素として映画を締めくくってくれます。
【ブーイングムービー賞】
該当作なし
【コメント】
映画の示す世界観や主題に嫌悪や反発を感じる作品は何本かありましたが、裏を返せばそれはそれらの映画がしっかり世界観や主題を観客に届け得たという事。
そうした真摯さの欠ける作品に触れずに済んだのは幸運な事でした。
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【勝手に○×賞】
[ダグラス・トランブル] (「ツリー・オブ・ライフ」)
「カムバック大賞」
【コメント】
私にとって『ツリー・オブ・ライフ』はランニングタイム25分のダグラス・トランブル監督作品です。光学合成の時代の人であった筈のトランブルが颯爽と復帰し、なんとデジタルイメージの恐竜をスクリーンに映し出している。それも当時我々を熱狂させ心酔させたのと同等以上のクォリティで。これほど心踊る光景はありません。
聞けば彼は本格的に商業映画の世界に復帰し、ショウスキャンを応用した60fpsのデジタル3D映画を準備中とのこと。完成が楽しみです。
[ワーナーブラザース日本支社]
「ワースト配給賞」
【コメント】
『ヒアアフター』はある意味、震災後の我々にとって最も必要な映画になる筈でした。死との対峙と受容に関して真摯に語った傑作を、単に「津波の場面が不適当」という勝手かつ安直な判断で自主規制してしまう態度は、映画を届けるという配給会社の本分に悖る最低の行為でしょう。
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